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「余程疲れていたか」
ソファーに沈み込む様にして眠る黒猫を前に、姫島は小さく笑った。
自分でもなぜこんな提案をしたのか分からない。
他人になど興味無かったはずだ。
「まあ、いい」
雨がやめば出ていくのだ。 面倒をみるのはきっと数日。
くしゅっと、小さくくしゃみをした体に毛布をかけてやる。
「そうか。 起きたら名前を聞かないと」
自分はまだ少女の名前すら知らない。
何も知らない者を家に上げ、更に一緒に住もうとは。
とても大の大人がすることとは思えない。
自分は寂しいのだろうか?
時計を確認すると6時を少し回ったところ。
少女が起きるまでの間に約束のご飯を作ろうと、姫島はキッチンへ向かった。
まだ、姫島自身も気付かない、かすかな恋心。
雨がやんだらと言った事を、彼は後悔することとなる。
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