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『ごめん……』
あの人は謝ってばかりだった。
『ごめん……』
あの人の“変化”から生まれた“私”という存在は不安定だった。
『許さなくていいから……』
あの人の“変化”だった“私”は、あの人を苦しめた。
“私”は、あの人を恨んでいない。
“私”は嬉しかった。
存在する事が許されて嬉しかった。
『ごめん……』
だから謝らなくて良かったのに……。
『ごめん……』
泣かないで欲しかった。
笑って欲しかった。
そんな哀しそうな顔では“彼”が哀しむ。
“彼”は、あなたを愛しているのだから。
だから、
『泣くな……』
頬に伝わる冷たい雫。
ああ、泣いているのは、
“私”ですか?
分からなくて、また哀しくなった。
違う分かっていた。
この世に存在した瞬間から“私”は──
“彼”に愛される事など無いのだから──……
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