シアン[過去]-親の喪失-

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僕は幼い頃、 弧児院に住んでいた 生まれてからすぐに捨てられ、 弧児院に入った と言うわけではない いや、 『捨てられた』 と いうのは 事実かもしれないのだが… こんな言い方をすれば 何て酷い親だ 離れられて正解だ 親と一緒にいる間は、 さぞ辛かっただろう と思われても 仕方ないようだが、 僕の頭の中に残っている 両親との思い出は どれも 輝いているものしかない 両親はとても優しかった 幼い僕でも 恥ずかしくなるくらいに 「愛してるわ」 だとか 「俺の自慢の息子だ」 と 馬鹿の一つ覚えのように 同じ言葉を 毎日繰り返していた 母は僕の目を見つめて フワリと 愛情に満ち溢れた微笑みを みせてくれていた 父は大きな手で僕の頭を くしゃくしゃに撫でて 安心させるように 笑んでくれた 僕はそんな両親が 大好きだった だけど、 両親はある朝 突然消えてしまった 家のどこを探してもいなかった 始めは混乱して 心配で、不安で、 何処に行ったのか探し回った だが、見つかる気配さえない 長時間探し回って、 疲れた俺は幼い故の (今思えばとても短絡的な) 考えで、 (多分遠くに出掛けて 今いないだけで、 明日になったら 帰ってくるだろう) と考え、 それからは、いつも通りに一日を過ごした次の朝になっても まだ両親は居なかった (お仕事が 長引いてるのかな…?) ぐらいにしか思わず、 また日を過ごした 両親の居ない家は 僕が思うより 広くて暗くて静かすぎた いつも両親と居た 楽しい空間だと思えなかった 両親といると、 僕が遊ぶには家は狭くて、 眩しいくらいに明るくて、 いつも笑い声が 聴こえるような空間 だったのに… 親を思い出して、 泣いた 「何処に行ったの? 早く帰ってきてよっ!! 何で置いていったの? ね、ぇ…っ!」 両親に聞こえるわけが 無いことを知りながらも、 この場に居ない両親に 寂しさをぶつけた でも、 それが更に 僕の寂しさを増やした 虚しさ、寂しさが いっきに襲いかかってきて、 耐えられず更に泣く それの繰り返しだった 朝、昼、夜、 時間は常に進み続け いつしか 一週間が過ぎようとしていた 両親がいないことにも、 この一週間で慣れた 泣くのを止めた僕は 何故、両親が 居なくなったのかを考えた (僕が悪い子だったから? あの日 挨拶しなかったから?) でも、 それくらいで 怒る両親ではなかった そして、 いつも通りだったはずだ 結局答えは出ないまま、 何日も過ぎていった
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