シアン[過去]-親の喪失-

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沢山あった食べ物も 残り少なくなってきていた これ以上待っていても 無駄だと思った僕は 近所の家に行くことにした 近所といっても 一番近い家で300mくらい 離れているため、 近所の人と会うことも 滅多にない 僕自体も当時幼稚園には 通っていなかったので 友達も居なかった そのため、近所の人が 僕を知っているのかも 疑問だったが… (お母さん達が居ないときに 家から出るなんて、 ちょっと冒険みたいだなぁ… ドキドキする…) 過保護に育っていた僕は 一人で家の外に出ることも なかった 冒険、といっても 過言では無いくらいの イベントに感じた 町を物珍しげに見る僕の姿は 回りの人から見て 奇妙に見えただろう いつの間にか 目的の家に着いていた インターフォンを押す 中からは インターフォンの音と 「はーい」 と人の声が聞こえた 両親以外の大人とは 話す機会が少ないため、 緊張でガチガチになりながら 扉が開くのを待った ガチャ ドアが開いて出てきたのは お母さんくらいの年の 女の人だった 「はーい! えっと、僕、お名前は?」 「えっと、あの…、」 (緊張して話せない…) もごもごと口を動かしたが 緊張して声は出なかった 「もしかして、 あそこの家のシオン君?」 「はい!」 自分を知っていたことが 嬉しくて少し声が大きくなった 「貴方のママには 凄くお世話になったわ。 ママは?どうしたの?」 「え、っと、居なくなって、 今一人で、 ご飯無くなってきて…」 言いたいことを 言おうとしたが言葉にならない 「え?何日くらい?」 あんな説明で わかってくれたみたいだった 「2ヶ月…くらい、です」 「そんなに!?」 それからその人は、 「ちょっと待ってて」 と、俺に告げると 何処かに電話をかけ始めた 通話しながら時節、 「何でですか!!」 「お願いです!!」 と怒ったような、 泣いているような声で 反応していた そして受話器を 電話に戻すと 俺を中に招いてくれた 「汚いところだけど ゆっくりしてね」 さっきの声を出した人とは 思えないくらいの 穏やかな声だった ただ目は赤くなっていて、 うっすらと涙がうかんでいた 「ありがとう、ございます」 「…シオン君、 …弧児院に行かない?」 次の言葉は、 今にも泣き出しそうな声だった 「コジイン?」 聞き覚えのない言葉に 首をかしげる 「弧児院って言うのは 身寄りの無い子を 育ててくれるお家みたいな ところのことよ」
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