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夢など、彼女は見ないと思っていた。
輝くような銀糸の髪に、蒼氷の瞳の彼女。
彼女は、魔女だったから。
この地方、詳しくは話せないがドイツの片田舎では塔に住む魔女に頼って生活していた。
凶作の年があれば魔女に雨乞いを願い、子が病に掛かれば魔女にみせた。
魔女は村を救い、それでも誰にも仕えぬ孤高の存在として畏敬されていた。
魔女、と呼んだのは魔女が自身を自身で魔女と呼んだから。
だから村の者は魔女の名前を知らなかった。多分魔女も忘れていたのだろう。書物にも、音にも名前が残らないとはどういう気分なのだろうと今ならそう考えるがその頃の私は何も思わなかった。
魔女は魔女であり、私達人間とは違っていると思っていたから。
魔女。
edelweissと使わない名前を教えてくれたその美しき人は、もういない。
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