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「いやぁ……っ!」
真夜中、屋敷に響き渡る発狂によって依斗は浅い眠りから目覚める。
バタバタと人が走り回る音がより依斗を不愉快にさせた。
痛む頭と軋む身体を持ち上げ、部屋の扉を開いた。
ちょうど、和也が全力で疾走しているところであった。
顔色は悪く、フラフラしていたけれど、必死に駆けていた。
「おい、何なんだ……? 何事だ?」
依斗は通りかかったメイドを捕まえてこの騒動の理由を問う。
依斗は和也の客であり、虫唾が走るほどに丁重に扱われていた。
メイドは不自然なほど丁寧な対応をする。
「早桜お嬢様で御座います。和也様の古くからのご友人で御座いまして……発作を起こされたのです……。最近は随分と落ち着いていらしたのですが……」
理由をそこそこに伝えるとメイドは持ち場に向かって小走りになる。
依斗は尚も続く悲痛な叫びが気になり、メイドの背中を追いかけた。
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