2:泡沫のマカロン

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「早桜っ!」 和也の声が聞こえた客間は依斗の部屋より数段豪華である。 そこら辺のアパート一室を遥かに凌ぐ広さは圧巻である。 それだけ早桜が位の高い客であることを物語っていた。 「ごめんなさい……っ」 涙で頬を濡らし、謝る姿に和也がキツく唇を噛み締めた。 繰り返される謝罪は痛々しく、人の声を耳に通さない。 「早桜、大丈夫だから……」 「ごめんなさい……、ごめんなさい……っ」 しゃくりあげる子どものような早桜をやがて言葉無しに抱いた。 和也は早桜の頭をなでる。 恋人を連想させるやり取りに依斗は不思議と違和感を覚えた。 「大丈夫……。早桜は俺が守る……」 「……か……ずや……」 和也が精神安定剤かのように縋る早桜が彼の肩越しに依斗を見た。 真っ赤な目が瞬きをすると微かに微笑んで瞼を下ろした。 一瞬に過ぎないこの出来事が依斗を捉えて離さなかった。
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