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「なぁ、和也……」
「何だい?」
「……あいつ、泣いてない?」
庭の椅子に座って風に髪を靡かせる早桜を依斗は部屋の窓から眺めていた。
時折、儚い視線が窓を貫いて依斗の心臓をおかしくする。
感じたことのない気持ちの名前。依斗にはよく分からない。
「泣いてるよ……。早桜の傷は……一生癒えないだろうから……」
「……どうにかなんねぇの……?」
「ならない……ことはないけど、時間と、それ以上に必要なものがあるから……」
和也も出来ることなら早桜を救いたいと強く思っている。
けれど、それは和也には難しい。
想うことは出来ても、それだけしか叶わないのがもどかしかった。
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