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「それで、また断ったんだ」
「まあ。でも、私が沖田総司が好きなのは事実だし」
弁当のご飯を突きながら、友達の梨奈は、呆れたようにパンをちびちびと食べる私を一瞥した。
今でも忘れられない。
あの、ポカンとした顔。
「は?て言われた。意味不明。沖田さんか好きで、何が悪いんだか」
そりゃそうでしょ、と言われ口を尖らせる。
そんな私に梨奈は、
「本当、好きだよね」
「うん」
私が今日一番の笑顔を見せると、深いため息。
「そんなんだから、彼氏ができないのよ」
「いや、いらないし」
「……」
答え、パンをはむっとかじる。
梨奈の言う通り、沖田総司まっしぐらだった私は、彼氏が出来たことは一度もない。
必要性を感じていない、というのもあるけど。
「もう、そんなに好きならタイムスリップでもしたら?」
「うん。タイムスリップしたい」
このやりとり、何回目だろう。
いつものことだから、冗談。
タイムスリップしたいとは思っているけど、本気にはしていない。
だから、まさか本気にタイムスリップするとは思ってもいなかった。
あの時までは。
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