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学校からバイトへ向かう途中、梨奈と別れ、お気に入りの場所である川へと足を運んだ。
懐かしいなぁ……ここでよく、父さんと遊んでもらったっけ。
『タイムスリップでもしたら?』
梨奈の言葉が、不意に脳裏を過ぎる。
タイムスリップ、か。
もし……もし、タイムスリップしたら──
「そしたら、絶対に救ってみせるのに……」
言った後で、後悔する。
私は、父さんを助けられなかったのに。
馬鹿馬鹿しいと頭を振り、その場から離れようとした時。
ピカッと、稲妻が走った。
「え……雨なんか降ってないのに……」
気付けば、辺りはいつの間にか暗くなっていて、少し肌寒い。
「急がなきゃ……」
雨が降る前に、バイト先まで行かなくちゃ。
お金がないんだから、少しでも稼がなくちゃならない。
ピカッと、また。
雷が近くで鳴る。
つい足を止め、膝を抱えてしまった。
「父さん……」
呟いても、何も起こらない。
ふと顔を上げた時、真上から眩しくて目も開けられない程の閃光が向かってきた。
「え……」
瞬間、私の意識は途切れた。
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