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触ろうとしたときあの人の顔が頭をよぎった
その人はもうこの世にいない
私のために命をはりそして死んでいった
レントンには嘘をついたけど多分気づいていると思う
触ろうと手をコンパク・ドライヴに近づけた瞬間私が私でいられなく錯覚を覚えた
錯覚というのも怪しい
もしかすると本当だったかもしれない
今ある幸せを泡のように消える、そういう錯覚も覚えた
何もない深く光の入らない海
体が腕が足が口が動かない
声すらだせない
何もない苦しみを表現できない
あなたが子ども達がおじいさんがいない悲しみを表現できない
何もできず海水に身を任せると脇のしたから泡がのぼってきた
泡の中はレントンと初めて出会った場面
だがすぐに泡ははじけた
また泡が上がってくる
泡の中はレントンと初めてケンカした格納庫
また泡ははじけた
次々に泡は浮かんでははじける
そして最後の泡がゆっくりと私の前で止まる
泡の中はレントンだった
そして泡がはじけ死んだレントンが私の前に浮かんでいる
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