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でもうれしすぎて…のぼせてくる…。
あたしはふらーっとなって、ぱったり。
机に伏せた。
はうぅっ。高谷くんがっ、高谷くんがっ。
男の子たちは笑う。
「あー、高谷、広瀬さんのぷに手さわるなんてっ。オレもオレも」
なんて、隣の席の飯田くんが、あたしに手を差し出してきた。
なに?
「握手っ」
飯田くんはにっこり笑って言って、あたしが手を出すと、ぎゅむっと両手で握って、ぶんぶん振って、むにむに。
……なんか…、恥ずかしいんですけど…?
その飯田くんの手を振り払ったのも、りっちゃんだった。
「いい加減にせいっ。
みっちゃんのぷに肌にふれていいのはあたしだけですぅ」
なんて、りっちゃんは、りっちゃんよりも体の幅の広いあたしをぎゅって抱きしめて、男の子たちに舌を出して。
あたしは笑った。
自分がどんなに醜いのかはわかってるつもりだ。
男の子たちは、りっちゃんみたいな細くてかわいい子を好むことくらい知ってる。
でも……憧れる気持ちくらい、持っていてもいいじゃない?
別に…高谷くんとつきあいたいとか、そんなふうに思ったこともないんだ。
ただ、好き。
そのすべてが気になる。
ただ、それだけ。
何も望んでなんかいない。
放課後、帰ろうとしたあたしは雨に降られて。
教室に置きっぱなしの傘を取りに引き返す。
扉を開けようとして、高谷くんの声が聞こえて。
少し鼓動を高鳴らせて、また盗み聞き。
「んじゃ、高谷、広瀬に告白罰ゲームってことで」
「えー?それ、罰ゲーム?オレ、広瀬さんだったらつきあってもいいけど?」
飯田くんのそんな声に、あたしはどきっとしてしまう。
男の子たちは笑い飛ばすけど…、本当だったら…少しうれしい。
「俺もそんなの罰ゲームって思わないけど?」
高谷くんが言ってくれちゃうから、あたしは一人、廊下であわあわ慌てふためく。
「なに?おまえら、デブ専?」
容赦ない進藤くんの言葉に、あたしはがっくりとさっきのドキドキもどこへやら。
肩を落として、そうだよねって納得する。
どうせあたしはデブだ。
デブを好きなんて言うと、男の子が笑われちゃうんだ。
あたしは傘を取りに入ることもできなくて、そのままとぼとぼと小雨降る中を帰った。
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