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近くの神社に初詣。
その帰りに和風な、茶店という言葉が似合いそうな店で茶を飲む。
生徒たちは喜んでくれて、恭平は早く帰りたいと言わんばかりの顔で。
恭平がまったくもって、この生徒たちに興味がないのは聞かなくてもわかる。
ここまで美人が揃っているというのに。
艶やかな女を5人も連れて歩けるのは、そうそうないだろう。
まぁ…、俺の目的はその中の一人ではあるけど。
「いただきます、桔平ちゃん」
彼女は終始笑顔で言ってくれる。
あまり会うこともないし、よくは知らないけど、礼儀正しい人だなと思わせられる。
この場は俺の奢りっていうこともわかってる。
細かいところをとれば、それもまた魅力。
「どうぞ」
俺が応えると、うれしそうに目の前のぜんざいを食べて。
かわいい。
また見とれてる俺がいる。
あのこと…忘れてくれていればいいけど。
「桔平ちゃん、今日はなんだか見た目も違うし、優しいお兄さんって感じね」
「芳乃さんより上に見える?」
「落ち着いては見える。頼りになりそう」
誉めてくれるよなぁと思う。
惚れる。
ハマる。
自分の中のものを認めざるおえない。
彼女の言葉が一番俺を喜ばせる。
「頼ってくれていいよ?」
「なーに?女の子、みんなに言ってそうなこと言ってくれて」
「そう思うなら、それでもいいけど。芳乃さんは頼るほう?」
「そうでもない。相談はされるほうが多いから」
「じゃあ、息が詰まりそうなときは俺に頼って。力になる」
芳乃さんはその顔をあげて俺を見て。
俺はその目が俺を見てくれるだけでうれしくて笑顔になる。
「桔平ちゃんのことだから、俺も頼っていい?とでも言うかと思ったのに」
「甘えたことばかり言ってるように見られてる?」
「…甘えなさそう。でも、私には甘えてない?」
「芳乃さんには甘えてる。…いや?」
「…全然。…なんだか口説かれてしまったようだわ」
「……いや?」
同じようにもう一度聞くと、彼女は笑っただけ。
その答えは聞けなかった。
落としたい。
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