Crazy for you?(Kippei)

13/28
前へ
/531ページ
次へ
どうすれば彼女の目に、俺が恋愛対象として映るのか、まったくわからない。 その膝の上に頭を乗せて、その腰に腕を回して甘えてみた。 妄想の中では、ここまですると怒られて、嫌がられる。 嫌がられて犯す。 けど、リアルな彼女は笑って、そんな俺の頭を撫でる。 嫌がらない。 俺が男だという意識もされていない。 それでいいのか悪いのかもわからない。 「桔平ちゃん、甘えるとかわいいなぁ。いつもは男前さんとしか思えないのに」 「……もっと…かわいがって」 腕を回した彼女の背中に手をあてて、撫で掴むようにその体にふれる。 背中から腰に。 腰から尻に。 男と意識されたくて、わざとだ。 本当はその膝枕だけでも俺には十分。 彼女は俺の手に手を重ねた。 「やりすぎ。桔平ちゃん?そういうことすると、あのケダモノみたいにもう近寄らないわよ?」 ケダモノ。 俺は名前を言われなくても、純兄を思い出した。 純兄もわざとじゃないのにとかばう気持ちもある。 というか、あれは…見せたくて見せたんじゃないだろう。 着物教室の女の子とセックスしてる姿なんて。 純兄は謝ろうとして、更に誤解されて逃げられて。 憐れにも思う。 ちなみに情報提供は着物教室の純兄のお相手である。 俺は逃げ惑う恭平の生徒たちの姿を思い出して。 「避けられたくはない」 はっきりとそれだけは言っておく。 彼女の重ねられた手にふれて、その指先に指を滑らせる。 でも男と意識はされたい。 女として求めたい。 求めると、その言葉さえ空振りしそう。 対象外だから。 「ねぇ?芳乃さん。なんで恭平の教室に通ってんの?」 「お茶やお花には昔から興味はあったけど。少しは女らしくなりたかったのよ。それだけ」 「……芳乃さんは十分、綺麗」 「…うれしいこと言ってくれるじゃない。ときめかせるの得意?」 俺は目を閉じて、小さく笑う。 喜んでくれるならうれしい。 「芳乃さんを初めて見た時から見とれていた。思ったこと言っただけ」 「なんか恥ずかしい。でも…ありがとう」 その手は俺の手を握ってくれて。 やっぱり空振りしてると思いつつも、ふれあえた幸せ。 その指先から爪先まで。 俺の目は見とれてる。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

606人が本棚に入れています
本棚に追加