Sweet?

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小学校の頃から、あたしはデブだった。 いつからデブと言われたのかわからないくらい、男の子たちはあたしを見ると、デブと言っていじめた。 りっちゃんは、いつもそんなあたしをかばってくれていた。 「みっちゃんのぷにぷにはあたしのなんだから別にいいでしょっ」 なんて、今と変わらない言葉で。 あたしはそんなりっちゃんが好きだった。 あたしだって、ダイエットに挑戦したことはある。 あれがいい、これがいいって言われたもの全部。 でもこんな体型になってしまうくらいだ。 ダイエットは続かなかった。 ダイエットに失敗するたびに、あたしはむくむく大きくなる。 その恐怖もあって、ダイエットも諦めた。 身長157cm、体重98kg。 もうすぐ3ケタになるって思ったところで、体重測るのもやめた。 その数字を見るのがこわいから。 りっちゃんみたいな、細くて小さい体に憧れはするけれど…。 もういいんだ。 デブって言われても傷つかないくらいに開き直ったもん。 恋愛も結婚も…たぶんしない。 あたしは日直で。 放課後に残って学級日誌を書く。 そんなあたしの前には…高谷くん。 そう。一緒に日直だったのだ。 二人きりの教室で、あたしは緊張して。 書いてる文字も震えてきそうで。 高谷くんが、じーっとこっちを見てるから、あたしは顔も上げられない。 近い。 近すぎる…。 「広瀬さんのさ、この下の名前、なんて読むの?みと?」 高谷くんは日誌に書いたあたしの名前を指差す。 「あ。美都で、みつって読む…の」 「ふーん。みつ…」 高谷くんがあたしのファーストネームなんて呼ぶから。 あたしは更に舞い上がってしまいそうになる。 もういいです、神様っ。 もう心臓ばくばくなんですっ。 お願いだから、もう高谷くん一人、先に帰ってもらいたいですっ。 こんなのあたし一人でじゅうぶんなんですっ。 「みつ…。ハニー?」 高谷くんはあたしの机に頬杖ついて、あたしににこっと笑いかけてくれて。 あたしは真っ赤になって。 「ハニー、俺とつきあおう?」 なんて。 あの罰ゲームってわかっていても。 高谷くんがあたしの手をとって、唇にあてて。 あたしの目を見つめたりなんてするから。 あたしは。 鼻血出して。 ぱったりと。 倒れた。
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