Sweet?

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悪魔なのです。 あたしの好きな高谷くんは、きっと悪魔なのです。 揃えられた眉と、通った鼻筋。 形のいい優しげな大きな目と長いまつげ。 厚めの唇にあたしの手をあてて…。 思い出しただけで逆上せてしまう。 その容姿はきっと、他の女の子もかっこいいって言うようなものなのです。 憧れなんです。 あたしなんかにつきあおうなんて言ってくれるはずもない人なんです。 大きな大きな胸の鼓動。 高谷くんが唇をあてた、あたしの手。 同じところに唇を押し当てると、ぷにっとした。 「ハニー、おはよ」 高谷くんがかけてきた朝の挨拶。 あたしは跳び跳ねるほど驚いた。 あ、悪魔が…っ。 「高谷、馴れ馴れしくあたしのみっちゃんをハニーなんて呼ばないでちょうだい」 りっちゃんが怒ったように言ってくれる。 「そうだぞ、高谷。おまえ、なに言ってくれてんの。ちゃんと広瀬に昨日のはゲームですって謝れよ」 進藤くんは高谷くんの肩に腕を引っかけながら言って。 あたしは知ってるって言っていいものか悩む。 違うの。 あの告白は聞き流せるの。 ゲームだって知っていたから、そんなの平気。 からかわれるのも慣れてる。 でも違うの。 あたしがドキドキするのは…、高谷くんがあたしのことをハニーって呼ぶから…。 あたしの手にキスしたから。 それだけなの。 「え?俺、マジ告白したつもりなんだけど?」 高谷くんは、そんな思いもよらないことをさらりと言ってくれて。 それを聞いたあたし、りっちゃん、進藤くんは本気で驚いて。 「ええっ!?」 なんていう大きな声が教室に響いた。 あたしはというと。 あまりの信じられない言葉を、ただひたすらに、からかわれているんだって自分に言い聞かせるのが精一杯だった。
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