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努はいつものように、分厚い電話帳のページを開いた。カレーを溢した白シャツのように黄ばんだ紙には、スペイン語と無数の電話番号が書き記されている。その中から、サッカーチームの電話番号を見つけ、直接電話するのだ。
だが、スペインに来てから少しの間に、知る限りのほとんどのチームに、既に努は電話を掛け終えていた。そのうちのほとんどからは、まるで相手にされなかった。
今見つけたチームは、郊外にある、セグンダ・ディビシオン。いわゆる二部リーグに所属するチームだった。努は、早速番号をプッシュし、受話器にしっかりと耳を当てた。聞き直しなどで、相手に少しでも不快に思われたくなかった。少し経って、年輩の男の声が聞こえた。
「こんにちは。何のご用でしょうか?」
努は、自分を奮い立たせた。なんとしても、早く所属チームを決めなければ。にわか仕込みのスペイン語を、ゆっくり、確実にこちらの意思を伝えられるように声に出した。
「私は、日本から来ました。チームに所属させて欲しいのですが、テストを受けさせていただけないでしょうか?」
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