36人が本棚に入れています
本棚に追加
「日本人? 悪いが、他を当たってくれ」
男の、相手にするのがめんどくさそうな口調の言葉が、努の耳に入る。次の瞬間には、既に電話は切られていた。努は、俯きながらもため息を堪え、受話器を静かに置いた。再び、長い電話帳とのにらめっこが始まる。
こんなことを、努は何日も繰り返していた。今の電話は、まだ良い方なのだ。努は、折れてしまいそうな自分に言い聞かせた。他の電話では、入団の意思を告げた途端、何も言われずに切られたこともあったほどだ。
その後、何十件かの電話を掛けたものの、やはり努は相手にされることは無かった。努は、堪えていたため息を、遂に深く吐き出した。そのまま、硬いベッドに倒れ込み、目を閉じる。この日電話を始めてから、既に半日が経とうとしていた。
しばらくしてから、努は、重い身体をベッドから起こした。飯でも食いに行こう。スポーツ選手は、身体が資本なのだから。そう思った途端、皮肉な考えが頭をよぎった。所属チームも決まらないクセに、アスリート気取りか、俺は。
最初のコメントを投稿しよう!