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だが、結果はこれだ。日本人街に入った努は、黄色い肌や黒い髪の毛に安心を覚えつつ、あまり高くなさそうな蕎麦屋に足を踏み入れた。一番安い掛け蕎麦を注文し、カウンターの背にぐったりと身体を預けた。
もし日本に強制帰国させられたら、周囲から完全に呆れられるだろう。親に土下座し、大学受験の為に浪人しながら、トレーニングを続けるべきだろうか。それとも、アルバイトをしながらクラブチーム入りを狙うべきなのか。
もしくは。努は、意図的に思考から排除していた考えと、少しだけ向き合った。サッカーを辞めるべきか。
もともと、自分は大した選手ではない。スタメンこそ勝ち取っていたが、決してチームの中心選手というわけでは無かった。飛び抜けた武器も持っていない。考えるほど気が滅入り、俯いていると、店員が蕎麦を運んで来た。
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