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気づくと、努は話し出していた。この男が、何者かはわからない。だが、語らずにはいられなかった。サッカー選手になりたいこと。家族や学校の反対を押し切り、仲間の助けを得てスペインに渡ったこと。しかし、いくら電話を掛けても、どのチームからも相手にされないこと。しゃくりあげながらも、言葉を紡ぐ。その間、男は一言も口を挟まず、黙って努の話に耳を傾け続けた。
「なら、うちに来ないか?」
「え?」
「しばらく、面倒を見てあげるよ。俺はスペインに来て、だいたい三十年くらいだけど、子供達も大きくなって一人暮らしをしていて、妻と二人暮らしだから、君が住む余裕やスペースくらいはある」
「でも……」
「クラブへの電話なんかも、私がやってやろう。手紙なんかも使えれば、ちょっとは進展するかもしれない」
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