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男の言葉は、努にとって、まさに至れり尽くせりだった。しかし、甘えていいものだろうか。悩む努に、男は強めの口調で声を掛けた。
「サッカー選手を諦めたくないんだろう? なら、すがるべきだ」
その言葉が、努の胸にすっと溶け込んだ。そうだ。今の状況を考えると、申し訳ないなどと思っている場合ではないのだ。努は、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ。食べ終わったら、ホテルを引き払って俺の家に行こう」
頷こうとして瞬間、再び目の前が滲んだ。努は、心が軽くなったことで溢れた安堵の涙を拭いつつ、急いで蕎麦を口へとかき入れた。
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