風の吹く町

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翌日、新しい学校の手続きのため、母親に連れられて学校へ行く事となった。 「道を覚えなきゃいけないから」 という理由で、車ではなく、歩いて行くことにした。 学校までの道のりは、まずアパートまでの坂を下って、線路を越えて、長い橋を渡り、交差点を渡った所にあった。 片道だけでも疲れてしまい、これを毎日通うのかと思うと、気が遠くなりそうであった。 学校に着くと、中にいた先生が案内してくれて、母親と共に校長室へ入った。 中に入ると、気の優しそうな男の人がいた。どうやら、この人が校長のようだ。 母親と挨拶を手短に行うと、後から女の人が入ってきた。 「こちらが、担任の平良先生」 と校長が紹介すると 「担任の平良 徹子(タイラテツコ)と申します」 と深々とお辞儀をした。 すると、校長が 「こちらが…」 と言いかけると、母親がポンと肩を叩いたので、 「小賀地 春樹(コガチハルキ)です」 と自己紹介をした。 握手を求められたので、平良先生と握手をした。 手を離すと、緊張をしていたせいか、手が汗だらけなのに気付いたので、手をズボンで拭うと。 「おいおいっ」 と平良先生に言われ 「あっ…いや…」 と慌てて誤解を弁明しようとしたが、笑われてしまった。 「面白い子だから、早く友達が出来ますよ」 と平良先生がフォローしてくれた。   母親は手続きの書類を提出しすると、部屋を後にした。 平良先生が見送りをしに外へ出ると、春休みだから校庭で遊んでいた少年2人がこちらへ走ってきた。 「おっ、丁度良かった。転校生の小賀地 春樹君」 と平良先生が言うと 「マ~ジで~?」 と声を合わせていた。 よく見ると顔が似ている。 「半田 恵一(ハンダケイイチ)と大慈(ダイジ)。よろしく~」 と二人同時に握手してきた。 「それじゃあっ」 と言って2人は走りさった。 「早速友達になったみたいだね。あの双子はとにかく元気だから」 平良先生は少し笑った。 校門まで見送ってくれて、そこでまた挨拶をすると、長い帰り道を歩いた。   ようやくアパートに頃には、日は落ち始めていた。 『昨日は忙しかったから、ここの夕日を見るのは、今日が始めてだなぁ』 そう思いながら外で夕日を眺めていると、会社の挨拶に出掛けていた父親が帰ってきて、一緒に家に戻った。
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