風の吹く町

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その日の夜は、帰宅した父親と一緒にお風呂に入ることにした。 ハルは先にお風呂に入って体を洗うと、父親が入ってきたので、場所を譲るように湯船につかった。 「学校はどうだった?」 体を洗いながら父親が言うと 「ん~、まぁまぁかな」 と答えた。 「そうか」 とだけ返事をすると、シャワーで体の泡を流して、湯船に入り、大きく息をついた。 父親はゆっくり天井を見上げながら伸びをして 「あの学校は、俺も通ってたんだ」 「へぇ~…」 ハルは少し驚いた顔をした。 「この辺に住んでたんだ。小学校3年生から5年生の間なっ。そのあとはまた引っ越したんだ」 遠くを眺めるように父親が話した。 「その時はどの辺に住んでたの?」 とハルが聞くと 「ここだ」 と地面を指差した。 「でも、引っ越したすぐ後に火事になって、建て変わったらしい」 「ふ~ん」 ハルは小さくうなづいた。 少しのぼせてきたみたいなので、ハルは先に湯船から上がり、服を着ると母親が夕食をテーブルに並べていた。 少し準備を手伝うと父親も風呂から上がってきた。 冷蔵庫からビールを1つ出して飲みながら 「ハルに友達出来ると良いな」 と言うと母親が 「もう出来てるよ」 と微笑んだ。 「ケイイチ君とダイジ君って双子の男の子。同じ4年生なんだって」 「へぇ~、早いなっ」 父親も少し笑った。 父親と母親で今日の学校での事を話始めていた。 ハルは黙ってごはんを食べ終るとテレビを見た。 何気無く窓の外を見ると、誰かが駐車場に立っていた。 よく見ると、この前の女の子だった。 何かを待つわけでもなく、ぼんやりと立っていたのが薄気味悪かったが、気になったので外に出てみた。 ハルは女の子がいた場所に行ってみたが、女の子はいなかった。 不意に後ろから 「おい」 と声をかけられたので、驚いて思わず 「うわぁあぁ!!」 と叫んだ。よく見たら父親だった。 「バカッ!夜に大声出すなっ。びっくりするじゃねぇか」 父親は口元に人指し指を当てて静かにするように促した。外に出たのを見て、追って来たようだ。 「どうした?」 と聞いてきたが、答えようがなく 「別に…」 とだけ答えた。 呆れた顔で 「そうか」 とだけ答えると、頭を掻いて 「コンビニでも行くか」 とゆっくりと歩きだし、ハルは父親についていった。
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