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ピッピッピッ――――
規則よく鳴る音が耳の中で反響する。
何も変わらない音。
何も変わらない色。
何も変わらない今。
何も変えられない時。
全ては虚しく進んでいく。
「ん?」
僕は病院特有の鼻を刺激する匂いに起こされた。
「お、ユウト。起きたのか?」
目を開けると新が目の前に立っていた。
「どうしたんだ?お前が倒れるなんてよっぽど酷いことがあったんだろうな」
「あ、うん」
特に苦もなく起き上がれた。どうやら、ここは病院のようだ。
ガチャ―――
「ユウト!?もう起きても平気なの?」
夕夏が心配そうに僕を見る。
「ん?全然大丈夫だよ」
『…………きろ』
「それよりも、寝てる暇じゃないぞ!零さん達を迎えに行くぞ!」
「わかった………零さんって新の新しい彼女か?」
僕は笑いながら新の脇腹を軽く突く。
「はぁ?」
「え?」
二人とも驚いた顔をしていた。
「ちょっと、待てよ。なんだお前まだ本調子じゃないんだな。夕夏ちょっと医者呼んできて」
「う、うん」
「ん?どうしたんだ?」
僕は訳がわからず首を傾げた。
『…………めろ』
「なんか言った?」
声が聞こえ新に聞いてみる。
「いや、何も言ってない」
「そっか」
空耳だろうと判断し険しい新の横顔を見つめていた。
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