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「部分的な記憶喪失って言うのは言葉の通りだ。何かしら強いショックか頭を強く打つとなる病気だ。前者のショックは精神的なショックをさす」
「精神的なショック?」
「そうだ、例えば大事に可愛がっていたペットが死んでそのショックに耐えきれず自分を守るために脳が記憶を封印するんだ」
「封印?」
「多分新城君の場合はこっちの精神的なショックの可能性が大きいだろう。人間の防衛本能ってやつだな」
『なるほど』
「よくわかりません」
「まぁ、君がわからないのは仕方ない」
「それで、記憶は思い出す事ができるんですか?」
「むむむ。そればっかりは時間が必要としか言えないな」
「そんな………こんな時に」
夕夏はうつむきながら悔しそうに拳を握る。
「今は耐えるしかないのかよ」
悔しそうな二人が雄仁には不思議に思えて首を傾げることしか出来なかった。
「とりあえずもう退院しても大丈夫だよ。もしまた問題があったら来てくれ」
「はい。ありがとうございました」
お礼を言い荷物をまとめて病室を出た。
『さてさてどこに行くのやら』
また、お前か。
「新、夕夏ごめん、一人にしてくれない?」
新と夕夏はお互いに目を会わせて頷き帰路についた。
おい、お前はなんなんだよ?
『俺が何者かは教えられない。でも全てを知っている』
じゃあ、教えてくれよ。
『ダメだ。お前にはなにも教えられない』
なんでだよ。
『お前が自分自身で全てを思い出さないといけないからだ』
……たしかにその方がいいのかもしれないな。
『素直だな。それじゃあこれだけは教えといてやる。事態はお前が考えてる以上に深刻だ』
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