伝説の幕開け

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「ぐっ…!」 とっさの判断で頭上からの一撃は何とか凌いだが、あまりにも重い一撃に体中の傷が開く。 「私の一撃を防ぐとは… 主は人間か?」 狼は距離を取ると警戒しながらも話しかけてくる。 「生憎魔法は使えないのでな。 体を鍛えた結果だ。」 「天狼種の私の一撃を受けて防ぎ切ったのは主が初めてだ。」 そういうと再び天狼は構え、襲い掛かってくる。 クライスはしゃがみ込み上からの一撃を回避すると一気に飛び上がり天狼の腹に一撃を入れる。 「がはぁっ……! て、天狼相手に峰打ちだと…!?」 「敵意の無い相手は切らない主義なのでな。 しかし、何故襲い掛かる必要があった?」 「我が子を守るためには仕方ないのだ。 我が身が滅ぶとも!!」 ガタガタの体を引きずるように突進してくる天狼に一撃目のような重みはなく、当たると同時に崩れるように倒れた。 「我が子? どういうこと…」 「ママ~!!」 「で、出て来てはダメだ! 隠れていなさい!」 「ヤダー! 僕もママと一緒に戦う!」 そういって折れた木の影から子犬程の天狼が走ってくる。 「子供が居たのか。 良く見れば体中ボロボロじゃないか。」 体には大きな傷は無いまでも至る所に切り傷や打撲傷のような傷があった。 「可哀相に… 子供まで傷だらけだ…」 「私の子供に触れるな!!」 震える体で未だに攻撃を試みる天狼を片手で抑えると無理矢理主従契約を結び傷を治癒する。 「貴様! 無理矢理主従契約を結ぶとは死にたいのか!?」 主従契約はお互いの同意によって初めて結ぶ事が出来るのだが、片方のみで無理矢理結ぶ事も可能といえば可能ではある。 しかし、この場合契約を執行したものは全身に咎の証と言う寿命を縮める痣が浮かぶのだ。
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