土方の悲惨な一日

23/23
1221人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
静かに怒る山南に為す術も無く、床に倒れたまま頭を垂れる土方を一瞥して沖田は再び笑みを溢す。 雛乃を襲った報いだと言わんばかりに、土方に向けて舌を出し踵を返すと、手前の座敷に佇む雛乃へ声を掛ける。 「雛乃ちゃん」 「あ、沖田さん。……あの、土方さんは?」 「大丈夫ですよ。山南さんですからね」 開口一番、土方の心配をする雛乃に複雑な感情を持つが、沖田は笑顔を張り付け雛乃の手を持つとすたすたと歩き始める。 「さぁさぁ、あんな二人は放っておいて大広間に向かいましょう。雛乃ちゃん、お腹空いてますよね?」 「あ、は……」 ぐきゅるるるる……。 雛乃の返事よりも先に、お腹から音が奏でられた。雛乃は恥ずかしいと赤面し、沖田は更に笑みを深くする。 「お腹、空いてるようですね」 「う……」 先程まで苛々していた感情は何処へやら。沖田は雛乃を連れ、楽しげに去っていった。 残された土方と山南。 土方が青ざめ、山南の説教を受けていた事を知るのはほんの僅かな者しかしらない。 「……ああ、そうでした。土方君」 「な、なんだってんだ」 「先日の原田君達が土間を荒らした件についても、言いたい事があったんですよ。もう暫くお付き合い願えます、よね?」 「……おぅ」 山南の説教は延々と、約四刻も続いた。それ以後、土方は全く山南に頭が上がらなくなったらしい。 土方の悲惨すぎる1日、だった。 ☆ 終 ☆
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!