歌姫と価値

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歌姫と価値

 さて、本当のことを言えば、笛吹きはたいそうお金に執着する男なのだ。歌姫の歌声に感動した聴衆たちがいくつもいくつもお金を置いていったのを見て、笛吹きは満足そうに目を細めた。俺の目に狂いはなかった、この娘は俺にとって良い仕事道具になる。笛吹きはお金を何回も数え直した。 「わたし、歌うの好きよ。あなたの笛の音も大好き」  夢から醒めていないように、歌姫は惚けながら呟いた。笛吹きがそっと歌姫の頭を撫でてやる。 「そうか、そうか。ならずっと俺の為に歌えば良い」  幸せそうに笑った歌姫を見ないで、その意味を知らないで、笛吹きは次の演奏会を想って嗤った。
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