0人が本棚に入れています
本棚に追加
歌姫と理由
拾い上げられた時から、歌姫にとって笛吹きが全てだった。歌姫には本当に居場所がなかったのだから、ああして手を差し伸べてくれた笛吹きが全てだった。
拾い上げた時から、笛吹きにとって歌姫は道具だった。美しい歌声は不思議と自分の演奏に調和するのだから、歌姫はお金を運んでくれる道具だった。
小さな違い。大きな違い。
涙を流す歌姫に、笛吹きは馬鹿みたいに戸惑ってしまって、何をすることもできやしなかった。
そうして歌姫は。
歌うことを静かに止めた。
最初のコメントを投稿しよう!