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『雪すごく降ってきましたね』
『珍しいな、ホワイトクリスマスなんて』
運ばれてくる料理を食べながら、当たり障りのない会話を続けた
沢村太郎は何をしたかったんだろう…最後の私への優しさ?
レストランを出て、私達は市松さんの自宅に向かった
『まあゆっくりしていけばいい』
私は…いろいろ期待しながらタクシーを降りた
すると玄関の前に、人影があった
人影は私達のほうに向かってくる
『京四郎、待ってたの』
そこにいたのは猫を抱いた、ショートカットの美人だった
『今更何しにきた』
『ずっと待ってたのよ』
市松さんの顔が歪んだ
『私、帰ります!気にしないでください』
『いいよ、あがっていけよ』
『でも…』
私達は無言で暖かい家の中へと入っていった
猫が我が物顔でクッションに寝転んでいる
『今日は何のようだ。ここにお前の居場所はないぞ』
『クリスマスイブなのに主人は出張なの…淋しくて来ちゃった』と猫女は無邪気に笑った
彼女結婚してるんだ…不倫してたんだな
『あなたみたいな男と暮らすなら無愛想な主人と暮らすほうが、よっぽどマシ…そういってでていった女じゃないか。俺に未練はないだろう』
『それはそうだけど…あなた私がまだ好きでしょ?こんなに猫のおもちゃ集めて』
少女のように笑う猫女と、市松さんの関係は深く長かったんだと思った
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