プロローグ

7/9
前へ
/515ページ
次へ
「警官がっ!警官がやたら居るんだよ!その所為で折角の大物逃がしたじゃねぇかぁ!」 そう怒鳴って、地団太踏んだ。 「折角のショートケーキぃいい―――!!」 漸く着いた我が家の前で咆哮を上げた。 彼は近寄ってきた警官から逃げるべく、窓辺に置いてあったショートケーキを食べれずに終わったのだ。 好物の本人には、とても深刻な問題だ。 レオンは三人の子供を養う食料泥棒である。 幼い頃、レオンを拾ってくれた人が盗みのイロハを教えてくれて、その技術と一般人よりも優れた身体能力、五感能力を駆使して街に住む人々―――否。悪人から少しずつ食糧を失敬しているのだ。『悪人から盗る』のもまた彼の師匠の教えである。 その人は既に亡くなってしまったけれど、今も尚師と崇め、教わった事を守りながら子供達を養っている。 本日も一週間分の食糧調達のために中心街に入って行ったのだが、警察官があちらこちらに跋扈していた。 お陰で裏道を渡り歩いて盗みを働いているレオンは警官達のパトロールを掻い潜って逃げ回る羽目になった。そして、彼にとって最大の獲物も取り逃がす元凶とも言えた。 そもそもの原因がレオンの握り潰している新聞に写っているこの男。 ただ今、最も世間を騒がしている怪盗―――『カイル・アドヴァーン』である。
/515ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加