プロローグ

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奴はつい先日、七枚ある内の一枚、『クロムシルバー』なるお宝を盗んで逃げる直前。このマーブルの街に最後の一枚である『アクアブルー』という幻のコインがあるから盗みに行くと宣言したのだ。 新聞に取り上げられたせいで警官がカイルを見つけるべく躍起になっているのだ。 当然、同業者のレオンには迷惑極まりない宣言である。此処に住んでいる泥棒の事も考えて欲しかった。知能が高いと噂されているが、姿をわざわざ公に曝すような奴がそんな事するのが疑わしかった。 更にモテる理由も全く分からない。 今すぐ新聞を破り捨ててやりたい気分なのにそれをくしゃりと握り潰すだけで終わっているのは、レオンの養い子である子供達の中で、唯一の女子にして三番目。ジェシカが大層カイルを気に入っているからだ。 将来は彼のお嫁さんになるんだー、と言われた夜は眠れなかったのを思い出す。必死に枕を濡らさないように頑張った。 他に一番上が大人嫌いだけどしっかり者のセシル。二番目にやんちゃですばしっこいマイクの四人家族だ。 「よし、スッキリした」 レオンはドアノブを握って開ける。 そして日常が崩壊を告げた。
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