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心地良い微酔感の中でミラ・ライオーラは、百万ドルとも称される夜景を見つめ続ける。
金糸を束ねたようなブロンドの長髪。意志の強さと確かな知性を感じる瞳は、夜の彼方へと焦点をあわせており、肩に刻まれた大きなバラのタトゥーは下手をすれば下品に落ちるところでもあるのだが、彼女の場合はそれが得も言えぬエキゾチックな魅力を演出していた。
「キレイ……」
地上を遥か眼下に収めるホテルの一室。
一泊で平均的なサラリーマンの給料二ヵ月分が優に吹き飛んでしまいそうな豪奢な部屋の窓際、ソファーに体を沈めながらバスローブ姿のミラは夜の景色へと想いを馳せる。
サイドテーブルには、既に三分の二程が空になったワインボトルが置かれていた。
彼女のグラスに注がれているワインは若いながらも中々味の良いワインであった。
「やぁ、気に入ってもらえたようだね」
「……キース。ええ、素晴らしいわ」
ミラの向いのソファに腰掛けたバスローブ姿の男の名は、キース・カルメーロ。歳の頃は中年を目前に控えているのだが、未だに若々しい体躯を維持し、気力体力共に充実している様子であった。
キースはこの都市に本社を構える大手電子機器メーカーの重役であり、敏腕を持って業界に知られている人物であった。
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