1.御伽話じゃない昔話~tell no tales~

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それは遠い遠い未来の地球の物語。 長い年月を経て、三つの大陸と数え切れない数の島、そしてその間に広がる海に様相を変貌させた地球の人々の間では、我々が知り学んだ歴史は最早伝説と同じレベルで語られる物となってしまった。 八分の真実に二分の伝聞憶測で語られる我々の知る英雄や偉人達。 我々が聞けば誇張に過ぎる所もある位だが、それでも彼等は歴史書や小説の中で光り輝いていた。 そんな未来の彼等が異星人の襲来を迎えたのは本当に寝耳に水の出来事だった。 Stranger-Xと呼ばれた異星人は宣戦布告も無いまま、瞬く間に地球上の生物に攻撃を仕掛けていった。 その攻撃で地球上の約八割の人間は姿を消し、このままでは地球は滅亡してしまうと皆が思った時、奇跡が起こった。 突如地球上に出現した謎の光球群が異星人に襲いかかったのである。 その光球群に有効な攻撃を与えられない異星人は次々と撃退され、遂に彼等は地球から撤退を余儀無くされた。 日本人の血を引く者達は「神風」に類する奇跡だと信じて疑わなかった。 他の人間達もそれぞれの神に奇跡を感謝した事であろう。 光球の正体は分からぬままだったが、とにかく地球は滅亡の淵から救われた。 その光球群は異星人を撃退した後、次々と地中に消えていったという。 このStranger-X事件から約百年が経ち、復興の兆しが見え始めた頃、二人の怪人物が現われた。 「深谷」「夜神」と名乗る二人の人物は後に戦乱の火種となる物を人類に与えたのである。 地球のとある地層より採れる成分を用いて、錬金学的処理を施し柔軟性に富んだ金属へと変える技術。 無限とまではいかないものの、地球のどの大陸からも採取出来、精製する事が可能なその金属はバイオメタル(BM)と呼ばれた。 名前の由来は地層のとある成分に有機物を混合して精製する為であり、その柔軟性がまるで生物みたいだと言われたからである。 この精製法は主に「深谷」博士によって皆に伝えられた。 そしてそれを用いて人型兵器を作ったのが「夜神」博士である。 バイオメタルソルジャー(BMS)と呼ばれたその兵器は、その柔軟性により旧来の人型兵器より繊細で精密な行動が可能となった。
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