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『よく頑張りましたねえ。偉いえらい。じゃあこれで』
「ちょ、ほーこくを聞くとか今後の指示とか何かあるでしょー!」
女の言葉に少し五月蠅げな表情を浮かべるキツネ目の男。
『…後少しで五分経つんです』
「へ…?」
『延びた、キツネうどんを、私に食わせるつもり、ですか?大尉』
ヤバい!
この人は気紛れなおキツネタイムを邪魔されると百代まで呪いかねない程怒るんだった!
「どどど、どーぞ、ごゆっくりー!私は例の場所で待ってまーす!」
そう言って猫耳の女は通信を切った。
猫耳、キツネ目、二人共、メルキアの特務部隊の制服を着ていた。
エスタニア軍第九艦隊。
通称「紅の大隊」と呼ばれる。
率いるは真紅の女帝と国内外にその名を轟かせる名艦長、鶴巻紅子。
作戦成功率、隊員生還率、共に九割を超える名指揮振りにエスタニアで軍に従属する軍人の誰もが、彼女の下で戦いたいと願う程であった。
それも当然の話であろう。
無能な上司の無能な指揮で命を散らすよりは生還率の高い大隊に所属したいと願うのが当たり前の気持ちであろうから。
腰まで届く豪奢な真紅の髪に青みがかった瞳の豊満な肢体の美女。
彼女の先祖に北欧系が混じっている為か、髪と瞳にその血が現われている様だ。
身体のラインがクッキリと現われる服の上に軍服を羽織って、腕を組むスタイルに兵士は安心感を覚える様である。
そして何より、真紅に彩られた彼女の旗艦が健在である限り、自分達は負けないという信仰に近いものが兵士達の心を占めていた。
彼女の大隊はシャロムにとどめを刺すべく、首都ロンバルティアに進路を取っていた。
「…それにしても、ちとおかしいですね」
彼女の側に立つ軍帽を目深に被った士官が首を傾げる。
彼の名前は黒木政則。
肩の上まで伸ばした黒髪に茶色の瞳の沈着冷静な男で、紅子の傍らで作戦立案を担当する参謀であった。
彼が立てる複数の作戦から紅子が選び実行に移すというシステムが紅子の艦隊に九割近い作戦成功率をもたらしており、紅子と並んで兵士達に信頼されていた。
また、彼の趣味は釣りで、釣った魚でみんなに刺身や寿司を振る舞う事で有名だった。
その彼が首を傾げている事に紅子は気になった。
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