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俺、篠崎 愛斗(シノザキアイト)は
高校1年生でいつもは地味で存在感がまったくないが実は人気アイドルグループ「Dice」のaitoである。
なぜそんな俺がアイドルになったかというと半年前にさかのぼる…
__________
幼い頃両親を交通事故で亡くした俺と妹は、父方の祖父母の家で暮らしていた。
ある日俺は街で買い物に向かう為歩いていると、前方から怪しげな全身黒のスーツで固めた大きな男が歩いてきた。
街の景観とはまったく不釣合いなその格好故に、人々の視線を自然と集めていた。
出来るだけ関わらないようにと目を伏せながら、その男とすれ違おうとしたが、
「いきなりですけど、アイドルになりませんか?」
黒スーツの男は俺の前に立ち止まるとそんなことを言ってきた。
「…は、はぁ?」
あ、怪しすぎる…
格好だけでなく、そのいきなりの勧誘に思わず、失礼な返し方をしてしまったが、その男はそんなことは気にせずこう続けた。
「申し遅れました。私、株式会社トリニーズの荒川と申します。実は社長にスカウトするように頼まれまして」
そういって慣れた手つきで名刺を渡された。
その名詞には「株式会社 トリニーズ 森本亜紀」と書かれていた。
株式会社トリニーズ?人気アイドルたくさん輩出してる会社じゃん!!
そう、トリニーズといえば男女を問わず、多くの人気アイドルを輩出し、アイドル王国と呼ばれている。
アイドルを目指す者なら一度は憧れるといっても過言ではない。
しかし、そんなアイドル事務所が、アイドルにならないかと声をかけるだろうか。
それもお世辞にもかっこいいとはいえない容姿だと自負している俺を。
詐欺ではないだろうか。デビューという餌にレッスン料として多額の資金を要求してくるという詐欺のニュースを最近耳にした覚えがある。
それに男の格好も相まって疑念を抱かざるおえない。すると答えを渋っている俺に痺れを切らしたのか、荒川が強引に腕を掴み近くに停めてあった黒のセダンに、強引に乗せられた。
抵抗はしたつもりなのだが、あまりに強い力だったため、抵抗の意味は成さなかった。
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