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短髪の少女が、長い廊下を
駆ける。片手には花。
「王女様!!ご覧下さい、
今日、庭で見つけたんです!!」
部屋に入ると共に、部屋の奥に
たたずんでいる女性に
得意気に花を見せた。
少女の洋服の節々は、庭を
駆けていたせいか、
茶色く汚れている。
「綺麗でしょう?一目見た時に王女様に差し上げたくて
急いで摘んできたんです!」
王女は何も言わずに
目の前の花を見つめた。
「あ、じゃあこの花、花瓶に
活けてきますね!!!!」
にっこり笑うと花を持って
慌ただしく部屋を出ていく。
花瓶を抱えて廊下を歩く姿は
笑顔だが、どこか、寂しげでもあった。
ふと窓の外を眺める。
ここに来ていくつの年月が
流れたのだろうか。
連日続く内戦により、
目からは生気を無くし、
笑みはおろか、声を出すことも
止めてしまった王女。
「王女の笑みを取り戻せ」
大臣からの命に
逆らうことは、出来なかった。
「王女様!見て下さい!!花瓶に
活けると更に綺麗ですよ!」
いつまでも続く人形遊びから、
解放されるのはいつだろうか。
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