炬雨。

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靴をならしながら 薄暗い路地を歩くと 四方八方から音がする。 「判定のバニーだ。」 「今日も誰かが裁かれる。」 「鞭打ちか、それとも死か。」 雑音を気にせず歩き続けると やがて広いホールに着く。 ホールの真ん中には小さい籠に 収められた小柄な男。 私がホールの真ん中を通り、 男の目の前に立ったら 男は弱々しく顔をあげ、 私と目を合わせると とたんに恐怖に顔を歪めた。 少し離れたところにある 観客席からは、ざわめき。 それは、好奇か、恐怖か。 やがて、何百と聞いたか、 くだらないゲームを始める 合図の音が鳴った。 「さあ、判定を!!」 右目には、人の罪を映し。 左目には、人の善を映す。 幼い頃は気味悪がれ、 恐れられたが、今では 『判定(ジャッジ)のバニー』 だなんて名前がつけられた。 毎日のように繰り返される このゲームは、ただの 暇潰しでしかない。 右手に持つ鞭を床に 打ち付け乾いた音を鳴らし、 私は声を張り上げた。 判定を告げる。 「この男には、――――」 このゲームを止めることは 出来ないと知りながら。 .
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