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「今日も平和だったよね。つまらない位に。」
漆黒の闇の中を飛びながら、
ふと隣で同じように飛んでいる
小さな悪魔に話しかける。
悪魔は何も言わずに
黙って頷いた。
飛びながら目を細めて
昔を思い出す。
何万年前の話だったっけ。
「覚えてる?マグナカルタ。」
愉快そうに笑って空中で
くるり、と一回転して言った。
「あの頃は凄かったよね、神様と悪魔が殺し合ったんだ。」
僕も混ざって沢山の血を
浴びたっけ。
誰にも、文句なんて
言われなかったよ。
みんなが真っ赤だったから。
目を閉じると、あの頃の光景が
よみがえってきた。
悪魔に神が傷つけられて、
肩書きが豪華で立派な
神であってもあの戦場では
呆気なく息を絶やし。
「…まぁ、逆もあったけど。」
弱々しく笑うと、目を開いて
空を見上げた。
今では、己の悪魔と
いう属性に似合わない、
平和すぎる、単調な世界。
そうだ、
なにかを思い付いて止まった。
そして前を飛ぶ小さな悪魔に
ある提案を教える。
「今度は僕が壊せばいいんだ。この平和すぎる世界を。」
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