第2章 ‐水戸 泰一‐

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   一瞬、自分に向けられたものだと思っ  て体を震わせたけど。皆の視線は体育  館後方に向けられていた。  「佐久間、待ちなさい!」  いつもに増して声を荒げている体育教  師の先にいたのは、小さな小さな女の  子。  ポケットに手を突っ込んで、まるで教  師の存在を感じずに出口に向かって歩  くその子は、とても綺麗な髪色をして  いた。  ふ、と振り返ったその子と視線がぶつ  かったのは一瞬。優しく笑ったまま姿  を消した彼女を気怠そうに、でもどこ  か嬉しそうに追いかけていったのは隣  りのクラスの久住だったっけ。
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