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ゆっくりと近付いて目の前で見下ろせ
ば、女達の俯いた後頭部だけが視界に
入る。
「顔あげろ」
「もういいって」
「諭吉は黙ってろ!」
被害にあった本人がしれっとしている
事にもイライラして、諭吉にさえもキ
ツく当たってしまう。
人で溢れた教室も廊下も、誰一人とし
て沈黙を破らない。響くのは、俺と諭
吉の声だけ。
「顔あげろっつってんだろ」
そう言って真ん中にいる女の顎を掴も
うとした俺の腕は、いきなり後ろから
かかった強い力で阻止された。
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