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「もう完全に遅刻かと思って、わざわざお母さんの〝瞬歩スキル〟使ったのに……あーあ、これでまたおこずかいが減っちゃうよ」
なにやらブツブツと呟きながら歩いてきた女子は、僕と同じ制服を着た女の子だった。その制服は、黒を主体にして、動きやすさを重視して作られている超軽量のオーダーメイド。生徒一人一人の体格に合わせて作られているらしいそれは、なんと無料の支給品らしい。ぶったまけたもんだが、金銭的にあまり余裕がない僕にとってはとても嬉しいものだった。
てかなんでこの学校はこんなにも制服に金かけているんだろう……。
「んーと……あのぉ。ぼーっとしちゃってるけど、大丈夫かな?」
とそこで僕はハッと我に返る。目の前に、数十センチぐらい前に女の子の顔があった。思わず後ずさりをしてしまう。
「おー!?急に動くからびっくりしたっ。でもそんなに元気そうなら大丈夫かな?」
元気に笑うその女子生徒。改めてよく顔を見ると、とても綺麗な顔立ちをしていた。可愛い。おもわずそんな言葉が出てしまいそうになるぐらい整った顔をしている。顔立ちもそうだが、その後ろで、まるで流れるように長いさらさらな黒髪が、さらに女子生徒の雰囲気を際立させていた。
「え……かわいい……?」
まずい。出てしまうどころか実際に声に出していたらしい。いきなり知らない相手から可愛いなんて言われても気持ち悪いだけだろう。慌てて僕は口を開いた。
「あっとっ…ごめん!ちょっと急に来たから思わず本音が…っ!」
……と、言ってから後悔した。なんの言い訳にもなってないじゃないか。ただ恥を上塗りしただけだ。こんなことを言われれば、さらに変に思われることぐらいわかるじゃないか。
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