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自分自身の馬鹿さ加減に落ち込みそうになっていれば、
「かわいいなんて……初めて言われたよー」
さらっと問題発言する女子生徒。
初めて?うっそだーっと、とりあえず旧友のノリで一言言い出したくなるぐらいの衝撃だったが、なんとも見れば女子生徒の反応はどうも本気で驚きと、恥ずかしさを表しているようで、さして僕の発言にも気にもしてないようなので出かかった思いをゆっくりと鯨飲した。
「えへへ……はずかし」
もじもじと、両手を腰辺りで組んで恥ずかしがる女子生徒。可愛い。
「ってか、そんな場合じゃない!」
今の状況を思い出した。そうだ。彼女を見て和んでいる暇じゃなかった。
「あのさ、さっきまで君は急いでたんだよね?」
あまり状況は判断できなかったが、どうも彼女の言葉を勝手に聞いてる限り、どうやら彼女も急いでいるらしいことはわかった。
同じ制服を着ている時点で、目指している場所が一緒ならまずは彼女に聞くのがベストだろう。
「あっ!そうだった!ちょっと昨日は夜更かししちゃって、遅刻寸前だったんだ……あ、でも君がいるから安心だねっ。一緒に歩いていこっか?」
「いや、実はそんな暇はないよ……僕も遅刻寸前なんだ…」
「えー!?前の方で悠長に君が歩いていたから、まだ大丈夫だって思ったのにー!」
悠長に歩いているつもりはなかったのだけれど、彼女の驚きぶりからいってそんなにもアホみたいにゆっくり歩いているように見えたのだろうか。だが、少し気になることがある。どうも聞いてる限りでは、彼女は僕の姿を後ろから確認したようだったが、僕はずっと周りを気にしながら歩いていた。無論、後方にもだ。
だがしかし、彼女のような姿は人影すら見えなかった。坂道はまっすぐ続いているため、見えなかったということはないはずなのに。それに彼女は前方から現れてきた。どうなっている。不思議ちゃんなのか?まあ、天然っぽそうには見えるけど。
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