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「じゃあ早く行かないとっ。〝瞬歩スキル〟の継続時間はまだあるはずだから……」
「あ、待って!えっとその……この道は久留々木学園に繋がっているのは間違いないんだよね?」
「え?そうだよ?」
さらっと答える彼女。そうなのか、よかった。安堵でため息が出そうになるのをこらえて、言葉を続ける。
「なら僕も連れて行ってくれないかな。ここら辺を来るのは初めてでさ、どうも不安で仕方ないんだ」
こんなことを女の子に頼むのは至極、男らしく無さ過ぎるが、ここはもう藁にも縋る思いでお願いをしてみる。いつまでも続く桜並木を一人で見続けるのも飽きてきた所だ。本当は心細いだけなのだけれども。
「いいよー?この道はわたしも初めてだけど、走っていくのもいいかなぁって思ってたからね」
「よかった……どうもありがとう。助かるよ」
「いいってことよー!じゃあさっそくいこっか……ってあれ?」
すると彼女が不思議そうに僕を見やる。どうしたのだろう。なにか顔についているのだろうか。
「そういえば、君って何もスキル使ってないのっ?なんか何の匂いもしないし」
「匂い?」
「そう!わたし特殊体質で〝匂い〟で人が何のスキルを使ってるのかがわかるんだー。まあ、それが本当のスキルじゃないけどね…んー……くんくん。うん、やっぱなんの匂いしないなぁ」
なんのことだろう。それにさっきから彼女が普通に言っているスキルってのはなんだろうか。わからん。というか女の子にこうも匂いをかがれるってのも恥ずかしい。臭いって言われるよりはましだろうけど。
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