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「な、ななななななにがおこここここぉおおおおおっ!!!!!!!???」
「口開いたら舌噛んじゃうよー!!てか、喋れる余裕があるんだね!!んじゃもっと早くしちゃおっかなぁー!それー!」
───その原因が、僕がなにかしらの力で強引に走らされているため。だと気付いたのは、もうすでに彼女が限界までスピードを出し始めたころだった。ぶれる視界の中、僕の体と、強く握られた彼女の手。それと物凄い早さで動いている彼女の姿が確認したところで、僕が彼女によってひっぱられていることが辛うじて分かった。
(な、なんなんだこれは……っ!!)
明らかに、人間が出せる速さを超えている。自転車でもこんな風に景色が見えることはないだろう。それでも彼女は平然と僕の体を引っ張って、もとい、地面に引きづりながら勢いよく走っていく。
「んがががが、こわいこわいこわい!!!なんか足熱い!?僕の靴から煙出てるっ!!」
「あはは!!いっけぇえー!!」
どうやら、もう僕の声は聞こえてないらしい。楽しそうな彼女の声しか返ってこなかった。僕としては地面のコンクリートがおろしがねに見えてきているというのに。さっきから物凄い早さで、靴底が磨り減っていく感覚が生々しく伝わってきていた。
「このまま行けば間に合うよー!!もう少しだから頑張ってねー!!!」
本当に、本当に楽しそうに彼女は叫ぶ。
僕はしかたなく、今にも離れそうな手を必死につかんで、我が身が靴底のようにならないよう祈りつつなすがままに引っ張られていった。
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