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「ごめん、君が言っていることが全く分かんないんだけど───」
「ってあー!!イケない!こんな風に喋ってる暇じゃなかったよ!ねえ!はやく行かないとっ」
僕の言葉を切って、彼女が思い出したように叫んだ。
「あ、そういえばそうだった…!」
「うんっ。だから急ごう!ここ門だけど、ここからまた校舎は遠いから、またわたしが連れてってあげるよっ」
「え、またって──」
「いっくよぉおおお!!!それぇえええ!!!」
「───うごぇ!?」
彼女が腕をつかんだと思えば、またもや視界が真横にブレた。さっきと同じように突然のタイミングだったが、仮に心の準備が出来ていたとしても絶対にこれは慣れはしないだろう。心臓に悪すぎる。あと身体にも。
視界がぐんぐんと伸びていくが、どうやら目は速さに慣れてきているみたいだった。学園内のようすがだんだんと見えてくる。門をくぐるとレンガを組んだような真新しい道が遠く奥まで続いていた。その脇には緑色に茂った木々たちが生えている。そしてその奥には、道と同じようにレンガで作られた校舎らしきものが建っていた。雰囲気的に、どうやら西洋のお屋敷のような感じに見える。ざっと見だからよくわからないが。
「この表道の奥に、『覚醒認定検査場』があるんだよー!まあ体育館だけどね!」
「う、ぐぐ…よ、よくかんないけどそ、そこに行ければいいの?」
「そうだよーっ!もうすぐだからねっ」
走りながら、息も切らさず流暢にこたえる彼女。表情は見えないが、跳ねるように流れる黒髪が彼女の気性を表してるようで、なんか面白く思えてきた。
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