ラジオ水槽の需要は本当にあるの?

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【ライとカゲフミ】 「あんた、可哀想なやつね」 「私が?」 「そう、あんたが」  カゲフミが黒髪をちりちりと弄る。ライはくすんだシルクハットをちょいちょいと撫でて、嗤った。高い高い廃墟のビル、屋上は風が冷たい。二人の髪をくしゃくしゃにかきまわした。夕焼けが眠たそうに沈んでく。 「あんた、真っ暗だね」 「貴方は?」 「あは、はは、あたしは真っ黒」 「おやおや」  夕焼けがとぷりと消えて、真っ白な月が嗤いながら浮かんだ。今日も世界は廃墟のように崩れてく。カゲフミは夜に溶けていった。 「私は真っ暗ですか」  ライは目を細めて、どこかの紳士みたいに優雅に飛び立った。くらやみが廃墟を覆う。やさしい。
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