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【ライ】
あの人は愛していると言った、だから私はあの人を心から信じて愛し続けていた。なのにあの人は私ではない女とベッドに入っていたのよ。私は本当に愛し続けていたというのに、あの人は私を見て蔑むように笑ったの。お前なんかを愛するわけがないって。嗚呼、全て、全てが嘘だったのよ。あの人は私に嘘をついていたの。――なんて、女性がくだらない嘆きを零すたびに暗い黒い影が室内を充満していく。誰も気付かない。女性を慰める友人が、心の中で嘲笑っていた。その度に暗い黒い影は形を作っていく。誰も気付かない。嘘にまみれて偽善にまみれて、人間は作り出した。そうです。私を、愚かな嘘つきは愚かな私を作り出したのです。
「嘘を幸せに置き換えましょう。夢に沈めば、きっと何もかもが優しい毒に変わるのでしょうから。嘘は夢への招待状なのです」
足元から胴体、腕、首、そうして頭。生み出されたライは舞台上のピエロみたいに微笑んで、語る。
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