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「……はぁっ、何なんだよ、何なんだよアイツ……!」
若者は入り組んだ裏道を何度も曲がり、見つからないように走りつづけた。
だが――焦り。非日常的な事柄が身に起き、冷静さを欠いた状態でひたすら曲がり続けたために、ミスを犯してしまった。
行き止まり。更に焦りを募らせた若者は急いで引き返そうと後ろを振り向いた。
「……」
そこには先程の青年の姿。一歩ずつ若者に近づき、行き止まりの壁へと追い詰めていく。
若者はすぐ後ろにいるとは思ってもいなかったようで、声もださず、ただ眼を見開いている。額から大量の汗が流れ落ち、呼吸が荒くなってきていた。
「……お前で依頼対象は最後だ」
能面のように、表情が何も変わらない青年は、右手に持った――血に染まり、月の光でどこか艶やかな光沢を放つ刃の先を若者に向けた。
状況から察するに、今から青年が若者を殺すのであろう。しかし。青年の眼から、何も感情が感じとられなかった。
「何っ……なん、だよ」
若者が呼吸を乱し声を震わせながら嘆いた。
「何なんだよ、お前!!突然、俺らの前に来てダチ達を、皆殺して!俺らは、お前に何も、していないぞ!?なのになんで……!!」「依頼された。ただそれだけだ。」
鬼気迫る勢いの若者の悲痛な叫びに対し、一言。やはり感情の込められてない、棒読みのような言い方で青年は答えた。
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