7人が本棚に入れています
本棚に追加
小鳥の囀(さえず)りが聞こえる。
朝が来た事を告げるささやかな知らせ。
窓から差し込む朝日が、あるアパートの一角を照らしていた。
「……」
複数の目覚まし時計から鳴る大音量の音。しかし、その目覚まし時計をセットしたであろう本人は布団の中でうずくまったまま動かない。
目覚まし時計達が発狂したかの様に鳴り始めて数十秒後。
アパートのベルを鳴らしドアを叩く音が聞こえる。
「……」
それでも布団の中の人は起きない。
「──っ、あーもう!!入るよっ!」
突然響くは透き通った女性の声。その直後に何かが壊れた音。女性はアパートの中に入り、布団の前に立った。
「……」
依然として眠ったまま。
「起きろッ!!」
鉄拳。布団の中の人の腹部に強烈な一撃。その一撃は、これで目を覚ましても気絶してしまうんじゃないだろうか、と思う程の威力だった。
「ぽぁっ」
素っ頓狂な声を出し、布団の中の――青年は目を覚ました。
「げほっ、な、何す……って華奈?……お前どうやってこの部屋に入った?」
「やっと起きたわね、秋人。どうやってって、いつもどーりに決まってんじゃん?」
そう言い、華奈と呼ばれた女性はなぜか誇ったような顔つきで入口の方を指す。
そこには、垂れ下がってもはや再起不能だろうとうかがえる様なドアノブの姿だった。
最初のコメントを投稿しよう!